大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ツ)95号 判決

被上告人が本件建物を上告人に賃貸していたところ、上告人が昭和三〇年一〇月頃本田辰衛に右建物の店舗部分を転貸し、本田が昭和三九年一二月までみずから右店舗で営業をしたこと、被上告人が昭和四〇年三月五日上告人に、右転貸を理由とする契約解除の意思表示をしたこと、および被上告人はこれより相当以前から上告人の右転貸の事実を知っていたが(ただし、転貸借の期間および賃料額を知っていたとは認められない)、異議を述べず毎月上告人から家賃を受けとっていたことは、いずれも原判決の適法に確定した事実である。

原判決は右確定した事実に基き、被上告人は転貸借の事実を知っていても、その内容すなわち期間、賃料額等を知らなかったから、多年異議を述べずに上告人から家賃を受領していても、それだけでは黙示の承諾ありと認めることはできない旨判示し、その理由として、通常の場合賃貸人は、転貸借の賃料額が、原賃貸借のそれの範囲内かあるいは著しく超えない程度の額であることを推測するから、本件でもそのような金額であれば被上告人の黙示の承諾を肯定できようが、実際には原賃貸借の家賃が六千円であるのに、転貸借の賃料は当初八千五百円、のちに一万五千円に及んでいるので、黙示の承諾ありということはできない旨説示する。

しかし、賃貸人において、賃貸物件が転貸され第三者が使用していることを知りながら、多年異議を述べずに賃料を受領している事実があれば、転貸借の内容を知らない場合でも、転貸について黙示の承諾があったと判断することがむしろ自然であって、賃貸人の知らなかった転貸借の内容如何によって黙示の承諾の有無が決せられるという原判決の見解は是認しがたい。けだし原判決のような見解に立てば、例えば転貸料の額に争があったり立証がなかったりして金額が不明の場合や、当初は転貸料が低廉であったがのちに高額になった場合、あるいは約定金額は高額であっても転借人が現実には支払を怠っている場合などを通じて、黙示の承諾の有無を決する基準を見出しがたいことは明瞭である。また、原賃貸借の賃料額を超える転貸料が授受されていることが、多くの場合賃貸人の感情を害することは十分推量できるけれども、無断転貸借の中止を求めるとか、あるいは転貸料が高額であることを理由として自己の受取る賃料の増額を求める途は、賃貸人に開かれているのであるから、これらの行為に出ないで異議なく賃料を受領して来た場合、黙示の承諾ありと判定されることはやむをえないものといわなければならない。したがって、原判決の確定した事実のもとでは、被上告人が転貸借に承諾を与えたことを認めるべきであり、これと異なる原判決の判示は、民法六一二条の承諾の解釈を誤った結果、契約解除の効果に関する判断を誤ったものであって、この判断に基づき被上告人の明渡請求を認容した原判決は破棄を免れない。そして、被上告人は予備的に、占有侵奪を理由とする解除の意思表示による賃貸借契約の終了を主張しているので、本件については更に右の点の審理をする必要があることはいうまでもない。

(近藤 田嶋 吉江)

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